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大阪高等裁判所 平成7年(ラ)106号 決定

抗告人

甲こと

甲野一郎

右代理人弁護士

赤木淳

相手方

乙こと

乙川春子

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  抗告人は、「京都地方裁判所舞鶴支部が標記事件につき平成七年二月二一日にした決定(原決定)を取り消す。抗告人の相手方に対する原決定別紙目録記載債権の執行を保全するため、原決定別紙目録記載不動産に対する相手方持分一一分の三を仮に差し押さえる。」との裁判を求めた。

二  相手方は破産者であり、その破産手続はいまだ終了していないこと、抗告人の請求債権は、その主張するところによると、破産債権であることは、原決定の示しているとおりである。抗告人は、相手方が破産宣告後に取得した財産(新得財産)は破産財団に属さず、破産手続中であっても、破産債権者からの新得財産に対する仮差押えは可能であると主張し、原決定別紙目録記載の不動産は相手方が破産宣告後に相続によって取得した新得財産なので、これに対する仮差押えは許されるとする。

しかしながら、破産財団の換価代金をもって破産債権者への平等な配当をすることを目的とする破産手続とは別に、破産手続の進行中に、新得財産に対し破産債権者が給付請求をすることができると解するときには、破産手続で破産債権確定手続が行われることと重複する。このことに加えて、破産者の更生のための免責制度が存することからすると、一般に免責により支払を拒絶し得る可能性のある新得財産に対する執行は禁止されるべきものと解されるのであり、したがって、新得財産に対する破産手続中の個別の強制執行も許されないものと解すべきである。これに反する抗告人指摘の大判昭和二年三月九日・法律新聞二六七二号八頁の説示は、破産法に免責制度が存しなかったときの解釈であり、当裁判所の採用の限りではない。

三  よって、破産手続中に破産債権を被保全権利とする本件仮差押えは許されず、本件申立てを却下した原決定は正当である。なお、抗告理由のうち憲法違反を述べる点は、当裁判所の前記判断と同旨の原決定の法令解釈の違法をいうに帰する。本件抗告は理由がない。

(裁判長裁判官上野茂 裁判官山﨑杲 裁判官塩月秀平)

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